すみれやさんと関係資本主義

スローフード運動という言葉を聞いたことがある人は多いかもしれません。イタリア北部の小さな村で始まった運動ですが、表面的な解釈で「地産地消やオーガニックを推奨する運動」と捉えると本質を見失うように思います。それは、地産地消だから買う、オーガニックだから買う、といった「価値」や「理念」の話ではなく、「あなたが作るから買いたい」「あなたが食べてくれるから良いものを作りたい」という、人と人の関係性の話だからです。

 

京都で何十年と有機農作物のバイヤーをしていらした星野さんという方がいます。もう亡くなってしまわれたのだけど、生前に氏と交わした会話で忘れられない一節があります。「有機農家と付き合うにはな、一緒に農薬も食ったる!って気概がないとあかん!」そう言ってカラカラと笑っておられたのだけど、この言葉はそれからずっと僕が生産と流通、消費に関することを考えるときの指針となっています。有機と農薬、という逆説を含むアイロニーが伝えてくれるのは、モノやコトにとらわれずヒトを見よ、すなわち関係性が先にある、ということだと思います。

 

僕には推しの有機農家さんが何人もいます。例えば彼らの畑で未曽有の虫害が発生して、「このままでは収穫ができない。少しだけ農薬を使っていいか?」と相談されたら。「いいけど買いません」と言えるだろうか。ここで支えられなかったら何のために自分がいるのか分かりません。水くさいこと言うんじゃねえ。

 

弊社のHPに記した理念では「生産者さん、お客さん、卸店舗さんを『ともに歩むひと』と定義づけ」ています。人生を共有する人たちと作る経済圏では、競争原理ではなく共創原理によりクオリティが高まります。だって大好きな人には良いものを使って欲しいじゃないですか。そうして作られたものを使うとき、作った人と一緒にいるような安心感をおぼえるじゃないですか。

 

地域社会が崩壊し、人が個人単位までバラバラにされ、高度になりすぎた流通と資本主義経済の下では、溢れる匿名のモノに囲まれてもそこには孤独な豊かさしかありません。これは不可逆な流れかもしれないけど、ヒト、モノ、コトを有機的に再接続し、社会に包摂されている確かさを取り戻したい。そんな想いを具現化してくれているのが、すみれやというお店です。

 

オープンの時からコーヒーを置かせていただき、季節ごとに開催される、生産者と消費者が繋がる場「すみれやマーケット」にも毎回出店させてもらっています。そんな地域のコモンとしてのお店、すみれやさんが新たな取り組みをはじめられました。まさに「みんなで流通を作る」試みです。

 

ぜひご参加ください☺︎

 

すみれやサポーターについて(すみれやHP)